海外で暮らす日本人家庭の子どもたちにとって、現地の教育制度に適応することは決して簡単ではありません。
そうした背景から、日本と同様のカリキュラムで学べる日本人学校などの在外教育施設は、海外で暮らす子どもたちにとって貴重な学びの場となっています。
特に、文部科学省の認定を受けた「私立在外教育施設」は、日本の私立学校が海外に設立した教育機関であり、現地にいながら日本式の教育を受けられる場として注目されています。
本記事では、私立在外教育施設とはどのようなものか、その特徴や入学のメリット、代表的な学校についてわかりやすく解説します。
目次
私立在外教育施設とは?
私立在外教育施設とは、日本の私立学校法人が海外に設置した学校で、文部科学大臣から認定を受け、国内の小学校・中学校・高校と同等の教育課程を有するとされています。
そのため、中学部を卒業すると日本の高校への入学資格が得られ、高等部を卒業すると日本の大学への進学資格が得られます。
私立在外教育施設が選ばれる理由
以下に、私立在外教育施設が選ばれる理由をご紹介します。
- 私立在外教育施設では、国内と同じ教育課程を受けることができ、海外に住んでいる日本人の子どもたちは、日本と同じ学力水準で学び続けることができます。特に、高校卒業後に日本の大学への進学を希望する場合、同じ教育基準を維持している点は大きなメリットです。
- 私立在外教育施設には、慶應義塾大学や早稲田大学、立教大学などの大学附属校が多いため、これらの大学に進学する際、国内の入試と比べて入学のハードルが低い点が大きな魅力です。附属校に進学することで、入学試験を受けることなく大学へ進学できる場合があり、親としては安心感もあります。
- 同じような立場の日本人家庭とつながることができ、コミュニティやネットワークが形成されます。これにより、情報交換やサポートが得られやすく、海外での生活も安心して過ごせる環境が整います。
私立在外教育施設一覧
学校名 | 国名 |
立教英国学院 | イギリス |
帝京ロンドン学園 | イギリス |
スイス公文学園 | スイス |
早稲田渋谷シンガポール校 | シンガポール |
西大和学園カリフォルニア校 | アメリカ |
慶應義塾ニューヨーク学院 | アメリカ |
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海外にある慶應および早稲田の関連校
慶應や早稲田といった有名大学には、実は海外にも関係する学校があります。
ここでは、それらの学校がどこにあり、どんな教育を行っているのかをご紹介します。
慶應義塾ニューヨーク学院
ニューヨークの郊外に広大なキャンパスを持つ慶應義塾ニューヨーク学院(以下、慶應NY)は、1993年に在外の塾員(卒業生)の声を受けて設立されました。
生徒数は中学3年生から高校3年生までの350名程度で、基本的には寮制です。
ほぼ100%の生徒が慶應義塾大学に進学することができ、国内の受験に比べて入学の難易度が低いと言えます。
しかし、その反面、経済的な負担が大きいため、進学を選択するのが難しいと感じる家庭も少なくありません。
年間の費用はおおよそ450万円程度かかり、かなりの金額となります。
それでも、多くのご家庭が「何としても入れたい」と強く希望しているのが現実です。
慶應NYの大きな特徴の一つは、他の慶應系列校と比べて受験回数が多いことです。
春のAO入試I、春のAO入試II、秋のAO入試の3回の受験機会があり、これにより受験のチャンスが多くなっています。
AO入試は、まず書類選考を通過した後、二次試験として英語と数学の60分間のテスト、日本語の45分間のテスト、さらに日本語と英語で行われる面接が実施されます。
慶應義塾ニューヨーク学院の基本情報
以下に、慶應NYの基本情報をご紹介します。
慶應義塾ニューヨーク学院の基本情報 | ||
所在地 | 3 College Road Purchase, NY 10577 USA >>Googleマップ |
|
募集人数 | 約90名 | |
受験資格 | 公式HPをご確認ください | |
受験料 | 500ドル |
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募集人数は春のAO入試I、春のAO入試II、秋のAO入試の3回の試験で第9学年・第10学年、男女合わせて約90名となっています。
早稲田渋谷シンガポール校
シンガポールにある早稲田渋谷シンガポール校(以下、早稲渋)は、1991年に渋谷教育学園が100%出資し、渋谷幕張シンガポール校として開校しました。
現地の日本人コミュニティから「日本の高校教育を海外でも受けられる場をつくってほしい」との声が上がったことが、開校のきっかけでした。
その後、2002年に早稲田大学が経営に加わり、現在の早稲田渋谷シンガポール校に校名が変更され、正式に早稲田大学の系属校となりました。
現在の出資比率は早稲田大学が60%、渋谷教育学園が40%です。
キャンパスはシンガポール西部に位置し、日本と同様の4月始業で、高校3年間のみの全日制課程が設けられています。
1学年あたりの募集定員は120名で、授業はすべて日本語で行われています。
早稲田大学からは毎年90名分の推薦枠が与えられており、多くの生徒が推薦により進学しています。
早稲田渋谷シンガポール校の基本情報
以下に、早稲渋の基本情報をご紹介します。
早稲田渋谷シンガポール校の基本情報 | ||
所在地 | 57 West Coast Road, SINGAPORE 127366 >>Googleマップ |
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募集人数 | 120名 | |
受験資格 | 公式HPをご確認ください | |
受験料 | 468.60シンガポールドル |
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私立在外教育施設の可能性
海外に暮らしながら、日本の私立校と同等の教育を受けられる「私立在外教育施設」は、単なる“海外の日本人学校”ではなく、質の高い教育と確かな進学実績により、海外で日本式教育を希望する家庭にとって、信頼できる受け皿となっています。
帰国後の大学進学を視野に入れたカリキュラムや、日本の教育に根ざした生活環境は、現地校やインターナショナルスクールとは異なる魅力を持っています。
また、慶應や早稲田をはじめとした難関大学と強い結びつきを持つ学校もあり、海外での生活を経て、日本の大学へスムーズに進学できる道が整っているのも大きな特長です。
海外赴任や移住をきっかけにしても、進路の幅が狭まるどころか、新たな可能性が広がることもあります。
私立在外教育施設は、そんな前向きな学びの場として注目されています。