国際バカロレア(International Baccalaureate、略称:IB)は、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利団体「国際バカロレア機構(IBO)」が1968年に設立した、世界共通の教育プログラムです。
グローバル化が進展する中で、国境を越えて生活・移動する子どもたちが増加しており、IBはそのような子どもたちが世界中どこにいても大学進学を目指せるよう設計されたカリキュラムです。
近年では、帰国後の進学先としてあえてIB認定校を選ぶご家庭も増えています。
本記事では、世界で通用する大学入学資格である国際バカロレアについて詳しく解説します。
国際バカロレアとは?
国際バカロレア(以下、IB)は3歳から19歳までを対象に、初等教育プログラム(PYP)、中等教育プログラム(MYP)、ディプロマ・プログラム(DP)、キャリア関連プログラム(CP)の4つの課程を提供しており、国際的に認められた大学入学資格として広く知られています。
2024年10月時点では、IBプログラムは世界160以上の国と地域で5900校以上に導入されており、その数は年々増加しています。
日本においてもIB教育の導入が進められており、文部科学省はIB導入校の拡大を推進しています。
2024年12月時点では、日本国内のIB認定校および候補校の合計は251校に達しています。
注目すべきは、ディプロマ・プログラム(以下、DP)です。
DPは、6つの教科グループから一つ科目を選び、6科目を2年間で学習します。
ただし、「芸術」(グループ6)は他のグループからの科目に代えることも可能となっています。
2年間にわたるこのプログラムを修了し、IB Diploma(国際バカロレア資格)を取得することで、世界中の大学への入学資格を得ることができます。
実際に、100カ国以上、20000校以上の学校がIB Diplomaを入学資格として認めています。
大学受験に有利になるだけでなく、IB Diplomaを取得することで、入学後の単位免除や在学期間の短縮、奨学金を受けられることもあります。
DPはこれまで、英語、フランス語、スペイン語などで行われてきましたが、2016年からは一部の科目が日本語で実施できる「Dual Language Program(デュアルランゲージプログラム)」 が開始されています。
2年間のプログラムを全て履修し、外部評価(国際バカロレア試験等)および内部評価を通じて、45点満点中、原則として24点以上を獲得することでIB Diplomaを取得することができます。
配点は6科目それぞれに7点が与えられ、合計42点となります。
さらに、コア科目としてThe Extended Essay(EE/課題論文)とTheory of Knowledge(TOK/知の理論)の評価結果の組み合わせに応じて最大3点が与えられます(CASは評価対象外)。
国際バカロレア試験は、南半球と北半球の学校年度に対応できるよう、年2回、世界で一斉に実施されます。
日本の一条校の場合、試験は原則として3年次の11月に実施され、その最終スコアは翌年1月5日に通知されます。
IB Diplomaを取得するには、6つの科目に加えて、3つのコア科目を履修する必要があります。
The Extended Essay(EE/課題論文)
EEでは、生徒が関心のある分野を選び、個人研究に取り組んだ成果を、4000語(日本語の場合は8000字)の論文にまとめて提出します。
Theory of Knowledge(TOK/知の理論)
TOKは、「知識」の本質とは何かを探究する教科です。IBが掲げる構成主義では、「知識は常に人によって構成されるものである」とされています。先人たちは、この世界をどのような枠組みで理解してきたのか。二項対立に陥ることなく、実生活に役立ち、物事の本質に迫る意義ある問いの立て方、そしてその問いにどのように取り組むかについて学びます。
Creativity/Activity/Service(CAS/創造性・活動・奉仕)
CASでは、創造的思考を伴う芸術活動や身体的活動、無報酬での自発的な交流活動など、体験的な学習に取り組みます。
国際バカロレア資格を取得するためには?
IB Diploma(国際バカロレア資格)を取得するには、国際バカロレア機構に認定されたIB校に通う必要があります。
海外にお住まいの方は、インターナショナルスクールまたはIB認定を受けた現地校で、IB Diplomaを取得することができます。
国内でIB Diplomaを取得する場合は、インターナショナルスクールのほか、一条校でも取得が可能です。
一条校での取得では、英語で学ぶIB DPに加え、一部の科目を日本語で履修できる日本語DP(デュアルランゲージ・プログラム)を選ぶこともできます。
国際バカロレア資格で大学に進学するためには?
IB Diplomaを取得していれば、アメリカ、イギリス、カナダなどの留学先として人気の国だけではなく、シンガポールやヨーロッパ諸国などでも、大学入学資格として認められています。
そのため、日本の高校卒業資格よりも、幅広い国や大学への出願が可能です。
条件を満たせば、世界中の有名大学への進学も実現できます。
通常、海外の大学に出願する際は、学校の成績に加えて、TOEFLなどの外部テストスコアを提出する必要があります。
しかし、大学によっては「IBで総合〇点以上」や「特定科目のHLで〇点以上」といった基準を設け、それを他のテストスコアと同等に評価する場合もあります。
その場合は、外部テストを別途受ける必要はなく、IBのスコアだけで出願要件を満たすことができます。
さらに、大学によっては、IBで履修した教科を大学の単位として認定する制度を設けているところもあります。
もちろん「〇〇のHLで〇点以上」といった成績条件はありますが、大学で必要な単位数が軽減されるのは大きな利点です。
多くの場合、1年次に履修する基礎科目と互換性があります。
この制度は、トロント大学をはじめとする名門大学でも導入されています。
また、IB Diplomaのスコアを活用できるのは海外の大学だけではありません。
日本国内でも、IBスコアによる出願を受け付けている大学が増えており、共通テストなどを受けずに出願が可能です。
大学や学部によっては、一般入試や面接を経ることなく、IBスコアのみで出願・合格できるケースもあります。
例えば、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学などでは、IB Diplomaのスコアを活用した入試制度が実施されています。
国際バカロレア資格で切り拓く未来の進学先
本記事では、国際バカロレア(IB)について解説しました。
IBプログラムは、世界160以上の国と地域で5900校以上に導入されている、国際的に認められた教育プログラムです。
日本の高校に相当するディプロマ・プログラム(DP)を修了し、IB Diplomaを取得すれば、世界中の大学へ進学するチャンスを得ることができます。
さらに、国内の大学でも、IB Diploma取得者向けの入試制度が整備されており、一般入試を経ることなく出願できるケースも増えています。
このように、IB Diplomaを取得することで、国内外を問わず大学進学の選択肢が広がり、優遇されることも少なくありません。
帰国が決まっていて、まだ子どもの進学先が決まっていないご家庭にとっては、IB認定校への進学も一つの有力な選択肢となるでしょう。